高校物理で微分方程式は、物理現象を数学的に表現するための強力なツールで、物理の問題解決の幅を広げる鍵となります。
運動の方程式や電磁気学の問題など、多くの物理の問題は微分方程式に帰着されます。
これらの方程式を解くことで、物理現象の詳細な挙動を予測し、理解することができます。
本記事では、微分方程式の基本的な解き方とその物理的意味を解説し、具体的な問題を通じて、物理学における微分方程式の使い方を紹介します。
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微分方程式とは?
微分方程式とは、関数とその導関数(微分)との関係を表す方程式です。
具体的には、ある関数の導関数が他の関数やその導関数の組み合わせで表される形式の方程式を指します。
微分方程式は、物理現象のモデル化や解析に広く用いられます。
例えば、運動方程式 F=ma は、加速度が速度の時間変化率(a=dv/dt=d2x/dt2)として定義されるため、微分方程式の形式で表すことができます。
また、電気回路の解析や熱伝導の問題も微分方程式を使って解くことができます。
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うっちー
微分方程式は幅広く用いられていますので、しっかりと覚えておきましょう!
微分方程式で出てくる関数
基本的には高校物理の微分方程式に出てくる関数というのは実は指数関数と三角関数のみです。
ここでは微分方程式を解いた結果出てくるそれぞれの関数がどのような挙動を示すのかを結論から紹介していきます。
指数関数
指数関数が出てくる微分方程式では答えがある値に漸近する場合が多いです。
例えば力学の空気抵抗を考慮する場合や電磁気においてコンデンサーやコイルを用いて構成される回路において使われます。
答えがy=e-xのような形となりこれだとxが0の時に1でxが大きくなるとだんだん0に近づくというような挙動を示します。
三角関数
三角関数が出てくる微分方程式の例として、単振動を表す微分方程式があります。
単振動は物理学や工学でよく見られる現象で、たとえばバネに取り付けられた質量が振動する運動やコイルとコンデンサーによる電気振動などがこれに該当します。
答えがy=sin(x)のような形になり、周期的な運動を繰り返すという特徴があります。
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うっちー
微分方程式でそれぞれの関数がどのような挙動を示すのか理解していましたか?
微分方程式を解く
ここからは実際にどのようにして微分方程式を解いていけばいいのかを解説します。
数学でも扱わない内容ですが、高校物理で扱う解き方は1通りなので頑張ってついてきてください。
以下に、高校物理の問題における微分方程式の解き方の一般的な手順を示します。
1. 問題の理解と微分方程式の立式
物理法則(例えばニュートンの運動方程式やキルヒホッフの法則など)を用いて、微分方程式を立てます。
例えば、運動の問題では、加速度や速度を表す微分方程式を作成します。
2. 一般解を求める
a. 同次方程式の解を求める(特性方程式を解く)。
b. 特解を求める。
c. 同次式の解を足し合わせて、最終解を得ます。
3. 初期条件や境界条件の適用
与えられた初期条件や境界条件を用いて、一般解から特定の解を求めます。
例えば、位置や速度の初期値を使って定数を決定します。
以上が基本的な微分方程式の解き方となります。ただこれだけ示されても全く何を言っているのかわからないと思います。
そこでここからは指数関数と三角関数それぞれについてどのようにして解いていけばいいのかを具体例を用いながら解説していきます。
解が指数関数
まずは答えが指数関数となる場合について解説します。
例として空気抵抗を受ける自由落下する物体を考えることにしましょう。
上の手順通りに進めていきます。
1.問題の理解と微分方程式の立式
運動方程式は重力がgで速度をvとおき、空気抵抗係数をkとすると空気抵抗は-kvと表されるため、
dv/dt=g-k/m・v
と表されます。
2.一般解を求める
a.同次方程式の解を求める(特性方程式を解く)。
まず、同次方程式を解きます。
同次方程式とはdy/dt+p(t)y=q(t)から右辺を0とすることで解ける形に変形することで今回の場合、
dv/dt+k/m・v=0
となります。
この式は積分することができるため、
dv/v=−k/m・dt
の両辺を積分することで、
∫1/vdv=-k/m∫dt
より
log∣v∣=−k/mt+C (Cは積分定数)
左辺が自然対数より
v=Ce-kt/m
となります。これが同次方程式の解です。
b. 特解を求める。
次に非同次方程式(元の式)の特解を求めます。
dv/dt=g−k/m・v
より、特解をAとおくとAは定数なので、
0=g−k/m・A
より
A=mg/k
c. 同次式の解を足し合わせて、最終解を得ます。
最後にこれまで求めた同次方程式の解と特解を足し合わせることで一般解を得ます。
つまり、
v=Ce-kt/m+mg/k
※ここで、このように足し合わせることで一般解になるのは大学の線形台数によって示される内容であるため、その解説は省略します。
3.初期条件や境界条件の適用
最後に積分定数Cの値を求めるために初期条件を使います。
ここで初期条件として、t=0の時にv=0、つまりt=0の時に物体を静かに空中に離したとすると、一般解
v=Ce-kt/m+mg/k
より
0=C+mg/k
より
C=-mg/k
これより最終的な特定の解が、
v=-mg/ke-kt/m+mg/k
でありこれをグラフにすると
であり、初速が0でだんだん速さはmg/kに収束することがわかります。
※このグラフではわかりやすいようにm = 1.0 (kg) g = 9.8 (m/s^2) k = 0.5(kg/s)に設定しています。
解が三角関数
次は三角関数が答えとして出てくる微分方程式について解説します。
具体例として、単振動を用いてみましょう。
基本的には指数関数と同様ですが、一般解を求めるステップでオイラーの公式を用います。
1. 問題の理解と微分方程式の立式
単振動の微分方程式は、一般的に次の形をしています。
d2y/dt2+ω2y=0 (w=k/m)
2. 一般解を求める
a. 同次方程式の解を求める(特性方程式を解く)。
単振動の場合、解がeλyとなることを予想して、特性方程式を解くことで一般解を求めます。
d2y/dt2+ω2y=0
は、以下のような特性方程式を持ちます
λ2+ω2=0
この特性方程式を解くと、以下の根を得ます
λ=±iω
ここでオイラーの公式eix = cos x + i sin x を用いると同次方程式の解は、
y=C1cos(ωt)+C2sin(ωt) とおけます。(C1、C2は積分定数です)
b. 特解を求める。
今回の場合は
d2y/dt2+ω2y=0
の右辺が元々0であるため求める必要がありません。
c. 同次式の解を足し合わせて、最終解を得ます。
これもbと同様に足し合わせる必要がないため、今回の一般式は、
y=C1cos(ωt)+C2sin(ωt)
となります。
3. 初期条件や境界条件の適用
最後に初期条件を考慮することで特定の解を求めます。
初期条件としてt=0の時にv=0でy=Aの位置から静かに物体を離した場合、
t=0において、
A=C1
次に、一般解をtに関して微分することで
v=-wC1sin(wt)+wC2cos(wt)
より、t=0において、
0=wC2
これよりC1とC2がもとまったため、特定の解は、
y=Acos(ωt)
これをグラフにすると以下のようになり、確かに単振動していることがわかる。
※このグラフではわかりやすいようにA=1、w=2πと設定しています
まとめ
ここまでお疲れ様でした。かなりしんどい内容ばかりだったのではないかと思います。
ただし、この工程を一度やっておくことでなぜ単振動で三角関数が出てくるのか、なぜコンデンサー回路では徐々に値が収束していくのかなどの疑問に対して理解が得られると思います。
また、単振動に加えて徐々に空気抵抗を受けて振動が小さくなる場合などの複雑な現象に対しても微分方程式を用いることでその様子を導出することができます。
毎回このような導出をする必要は決してありませんが、この記事を通して微分方程式というツールの強力さを実感できたのではないでしょうか。
ぜひこれからも物理に対する深い洞察を得るための手法を活用してみてください。
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